演劇における「著作権」について

◎はじめに

  私たちが何か本を読んだり、音楽を聴いたり、お芝居を観たりしたとき、その作り手(作者、
作曲者など)がどのような過程を経て、その作品を作り上げたのかについて、思いをめぐらす
ことがあります。
  今日、さまざまな場面でそうした作り手の「その作品を生み出したこと」を保障する(権利を守
る)ことの重要性が問われてきています。
  他者の権利を侵害しないということは、私たちが一定のルールの中で生きている以上、基本
的に守らなくてはならない問題です。そのことをじゅうぶんに認識していく上で、「著作権」につ
いて、考えてみましょう。

1 著作権とは・・・・?

  私たちが、作品を上演する場合、だいたい大きく分けて次のかたちをとります。

 1)既成脚本をそのまま上演する。(既成)
  =ただし多くの既成脚本は上演に要する時間が60分を超えているので、作品をその  
  まま上演するというケースは、高校演劇の大会ではほとんど考えにくいです。

 2)既成脚本に手を加えて上演する。(潤色・構成)
  =既成の脚本を上演する場合は、加筆以外に、時間短縮に伴う脚本内容の一部カット 
   (セリフの変更など)、部員数などの状況に応じた登場人物の一部カットが行われ    
ることが多くなります。それらのケースはこの部分にあたります。また、海外の著    作物等
をもとに、原作品の主題をそのままにして細部を作り変えるものを「翻案」    といいます。

 3)演劇脚本以外の作品に着想を得て脚本化したものを上演する。(脚色)
  =例えば、絵本やマンガなどからヒントを得たり、小説、童話などに着想を得たりす    
る場合がこれにあたります。この場合、原作となる作品をどの程度脚本の中に組み    込
むのかという程度(分量)に関わらず、着想したこと自体が問われます。

 4)自分(たち)で着想したものを作品化して(創作)上演する。(創作)
  =このケースがもっとも自然なかたちでのいわゆる「創作」ということになります。    あ
る特定の人が一本の作品を書き上げる場合もあれば、何人かがアイディアを持ち    寄っ
て「集団創作」というかたちをとる場合もあります。いずれにしても、作者の    オリジナリテ
ィを活かして作り上げるという点では、もっともおもしろい作品に対    する取り組みとなりま
す。

  これらはいずれも、舞台で上演されることを目的として「作品」として示されたものを、身体表
現としての「演劇」に仕上げていくわけです。活字として表現されたものに、さまざまな動き、さら
には舞台装置、音響、照明などの効果をつけて、「かたち」として創り上げていきます。
  ところが、実際に作り上げていく中で、それぞれのケースについて、問題点が生じる可能性が
あります。例えば、

  2)の場合:「程度」の問題ではなく、手を加えた場合、もとの作品に対する「変更」が     
  発生します。
  3)の場合:原作となる作品のどの部分をどの程度脚本の中に組み込んだのかという「程  
     度」に関わらず、その作品から着想したこと自体が問われることになります。
  4)の場合:全く他の作品から影響(模倣)を受けないとは言い切れないということに注    
   意しなくてはなりません。また、知らないうちに、他の作品と似通った部分       が生
じる可能性もあり、これについてはもっとも気をつけなくてはならない       点になります。

  これらについては、近年、さまざまな議論がなされるようになりました。そうした状況をふまえ
て、作品を扱う上で、守らなければならない重要なことがらのひとつが「著作権」であるというこ
とを意識していきたいと思います。

2 当然守らなければならない「権利」として・・・。

  ある作品を舞台で上演するとき、それが正しい手順をふまえているかという点については、こ
こ数年問題意識が高くなってきています。
  ひとつの作品を創り上げていく上で「書き手」が払った努力に対して、その発表の権利を保障
するとともに、作品の価値を保障(金銭的なものだけではなく)するものでもあります。

3 「著作権許諾」について

  何らかのかたちで、他の人が作った作品を上演する場合、そのことを「原著作者(または著
作権に関する権利を有するもの)」に知らせて、許可を得ることが必要になります。
 皆さんのように高等学校の演劇部が、自主公演や発表会(地区大会以上の公演など)で上
演する場合、必要事項を記載した著作権許諾についての所定の手続きの書式を、著者または
出版社などに送付します。
 全国高等学校演劇協議会の機関紙である「演劇創造」に掲載した書式(ホームページからも
ダウンロードできます)などのほかに、晩成書房の「高校演劇脚本集」などに記載されている書
式などを参考にしても結構です。
  許諾にあたっては、「どこの団体が」「いつ」「どこで」「どのような形態で」上演するのかを必ず
記載しておきます。なお、上演時間や人数の都合などで脚本の内容をカットしたり、一部を変
更する場合は、そのことを明記し、必ず変更となる部分を記した脚本を同封(送付)するように
します。
 たいていの場合は、上演に対して許可がでますが、原著作者の作品における意図が著しく損
なわれたり、作品そのものの内容があまりにも大きく変更されたと判断される場合は、上演が
許可されないこともありますので、その点については、上演の意図を明確に伝えた上で、誠意
を尽くして、著作権者と連絡をとっていくことが大切です。
  なお、この上演許可は、1回の公演について1回ずつ必要になります。ですから、仮に地区大
会で選ばれて、さらに大きな大会に出場する場合などは、改めて上演許可を申請します。
  著作権料は、高等学校の大会発表の場合、「無料」かつ「90分以内という時間制限内(大会
(地区・県・ブロック・全国)については上演時間60分以内という規定がある)に上演」を行い、
その活動自体が「教育活動の一環」であることなどから、5,000円という金額が一般的です。
返信用封筒(切手を貼って)と許諾申請の書式を入れて、相手方に送りますと、折り返し「上演
許可」が送られてきます。
  なお、著作権使用料については、上演許諾申請をするときに、どのような支払い方法になる
かの問い合わせをあわせてします。先方からその方法について「上演許可」とともに知らせて
もらえます。
  最近、インターネットなどを通じて台本を検索するケースが増えています。この場合、サイトの
管理者がそのページを閉鎖してしまったり、なかなか著作者にたどり着かないケースもありま
す。メールアドレスなどを確認し、著作者と連絡を取り合うことが必要ですが、その場合も上記
の内容を明記した上で、先方に送り、その指示を仰ぐようにしましょう。許諾がメールで返信さ
れた場合も、必ずプリントアウトして、その文面を提出するようにしてください。
  いずれの場合も気をつけて欲しいのは、上演する脚本が決定したら、速やかにその申請を
行うということです。
4 では創作の場合は・・・・?

  よく「演劇部・作」というかたちで、創作劇を作って上演しているところが見られます。自分たち
の抱えている問題意識や生活実感を、自分たちのことばで、作品にしていこうという姿勢はと
ても大切です。
  しかし、ここでも気をつけなくてはいけないのは、例えば自分たちの好きな劇団の舞台や、ア
ニメーション、小説などから着想を得て、脚本を作るときに、そのプロットをそっくり真似て、あ
たかも自分たちが作ったように組み替えてしまうことがあるという点です。これは、書いた本人
たちが気がつかないうちに犯してしまうミスのひとつです。
  近年、こういったケースについても、かなり問題視されてきており、十分な配慮が必要です。
よく、バンドなどで原曲をアレンジして歌っていたりしますが、あれも学校の文化祭の範囲では
ある程度許容されるという範囲のものです。
 着想のもととなった作品が明確であり、そこから脚本を立ち上げる場合は、プロットをなぞる
場合の他、明らかにせりふの一部などを「借りてきて」脚本を作るような場合は、前に書いたよ
うに、原著作者(または出版社)に確認をとることをして下さい。

5 「著作隣接権」とは・・・・。

  もうひとつ気をつけて欲しいのが、いわゆる「著作隣接権」です。これは、舞台の中で登録商
標にあたるものなどを用いるときに、問題になります。
 例えば、「ミッキーマウス」の衣装を着るとか、「ドラえもん」の着ぐるみを着て踊るとか、タレン
トの踊りを真似るとかなどです。最近は、アニメーションやゲームのキャラクターについても、同
様の「肖像権」「複製権」などが生じてきています。
  基本的に、ショップなどで購入したものを着用する場合は、製品使用に対価を支払っている
ので問題は生じませんが、手作りの場合は使用許可を得る必要があります。ただし、もとのキ
ャラクターのイメージを著しく損なうような場合、使用は許可されません。
 また、商品のキャッチコピーをセリフの中に組み込んだり、宣伝看板などを装置に用いるとき
なども注意が必要です。
  CMの世界でもよく問題になっているので気がついている人もいるかもしれませんが、もし、
気になるようなケースが出てきた場合は、必ず使用について、原著作者(商標権利保持者)に
確認をして下さい。

6 音楽にも著作権がある

  ここまで、脚本についての著作権の話をしてきましたが、実は音楽についても、著作権があり
ます。舞台の中で、効果音として用いるさまざまな音源(雷、電車の音など)や曲(ロック、ポッ
プス、クラシックなどジャンルを問わず)についても、その使用について所定の手続きをJASR
AC(日本音楽著作権協会)に対して行い、使用許可を得ることが求められています。
  高等学校の演劇部が、上演に際して曲を使用する場合は、現在のところ主催団体が一括し
て使用状況を把握しています。
  大会発表などで、音楽CD、効果音などを使用する場合は、「使用曲名(タイトル)」「収録アル
バム名(タイトル)」「CD番号(CDの表面およびケースの背に記載されている)」「使用時間およ
び回数」を明記したリストを、事前に作成し、大会の主催者(例えば地区大会ならその地区の
事務局、県大会なら県の事務局)に提出します。
  なお、「生録」「着メロ」についても、音源が特定できるようような場合、また使用曲がわかる場
合は著作権の許諾が必要になりますので、注意しましょう。
  通例、4小節以上の曲の使用については、許可が必要とされています。さらに、リズムだけを
使用して、「替え歌」を作る場合もあてはまります。


7 心構えとして大切なこと

  演劇の発表活動は、多くの要素が絡み合って成り立っています。それはプロであっても、アマ
チュアであっても、同じです。
  その中で、「著作権」もまた、認識すべきもののひとつです。今まで記した内容は、「これをや
ってはいけない」という縛りの問題ではなく、「こうしていくことが望ましい」「こういうことをお互い
の立場のために守りたい」という基本的な認識の問題です。作品に対して敬意を払い、それを
自分たちの「かたち」として仕上げていくためにも、是非十分な意識を持って対応していただき
たいと思います。

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